ひげっちが好むものごと。

詩歌とボドゲを中心に書きたいことを書きます。

五行歌について(うたびと編・その1)

ひげっちは来月、生まれて初めて五行歌集というものを出します。

 

先日、出版社からゲラ原稿をいただき、

細かい修正点などを詰めている最中です。

 

出版の暁には、またこのブログでご報告をさせていただきますが、

5年間くらいまでには、まさか自分が本を出すことになるなんて、

思いもしませんでした。

 

「本を出そう」と思えたのも、実際に歌集を実現できたのも、

多くの人からの影響とご協力のお陰だと思っています。

 

今日は、私が大いに影響を受け、同時に大ファンでもある、

オススメの五行歌人5名をご紹介したいと思います。

 

 

草壁焔太先生

 

まずは、五行歌創始者であり、

五行歌の会」主宰の草壁焔太先生をご紹介させていただきます。

 

先生の略歴は、Wikipediaにも載っています。

ja.wikipedia.org

 

幸いなことに、最近では五行歌会や飲み会でも

ご一緒させていただく機会が増えました。

 

先生の歌について、私がどうのこうの言うのは大変おこがましいですが、

どの歌の根底にも、人間というものに対する信頼感が感じられるところが

たまらなく好きです。先生の作品にも悲しい歌や暗い歌があるのですが、

そうした歌にもどこかしら、ポジティブなエネルギーが込められているように

感じます。中でも好きな歌を一首ご紹介します。

 

人が
悲しい顔を
するような
真実が
真実であろうか
 
草壁焔太
『心の果て』より

 

先生は、五行歌集の他に、五行歌の入門書なども多数執筆されています。

 

www.amazon.co.jp

 

ご興味のある方は、どれから読んでも大丈夫だと思いますが、

個人的には、歌集なら『心の果て』から、

入門書なら『五行歌 誰の心にも名作がある 』から、

読むのがオススメです。

 

どちらも今では手に入りにくいのが難点ですが・・・。

 

読んでみたい方は、

近くの図書館で探してみるといいかもしれません。

下記のサイトがお役に立つと思います。

 

calil.jp

 

 

漂 彦龍さん

 

次に、私が五行歌を書き始めた直接のきっかけとなった方である、

漂 彦龍さんをご紹介します。

 

よく、「どうして五行歌を始めようと思ったの?」という質問をされますが、

私が五行歌を始めたのには、二つのきっかけがあります。

 

ひとつには、私の母(筆名:紫かたばみ)が、

11年ほど前から五行歌を始めており、

身の回りに五行歌集や五行歌会のプリント等がある環境にいて、

昔から文章を書いたり読んだりするのが好きだったこともあり、

自然と五行歌に親しみ、読者として五行歌に触れていたということ。

 

ふたつめのきっかけが、漂 彦龍さん(当時の筆名:蛇夢さん)の五行歌集、

『上映禁止』を読んだことです。

 

五行歌集 上映禁止

五行歌集 上映禁止

 

 

中でも、痺れたのはこの一首。

 

言葉が

まっすぐ

届かないのは

地球のカーブの

せいにしておく

 

蛇夢

『上映禁止』より

 

それまで、母親に見せてもらっていた五行歌は、

わりと母親と同年代の方が身の回りの生活のことを題材に書いた歌が多く、

もちろん「良いな」と思う歌もたくさんありましたが、

「自分でも五行歌を書いてみたい」と思わせるほどの刺激はありませんでした。

 

その点、漂 彦龍さんの歌は、風刺や皮肉に溢れ、ナナメから社会を見ている

感じがすごく心に響いたのと、その背景に滲む表現全般に対する造詣の深さや、

一字一句に神経が行き届いた言葉選びとその並べ方に圧倒されました。

それでいて、ユーモアのある歌や恋歌にも魅力的な歌が多く、

読み終えて、「すごい!こんな面白い歌を書く人がいるのか!」と

一人で興奮したのを覚えています。

 

私は今でも自分の作歌に煮詰まったら、

『上映禁止』を読み直します。

自分の中では、漂 彦龍さんの歌集は、

五行歌の教科書のようなものかもしれません。

勝手に心の中で「師匠」と呼んでます。

 

 

飯島治雄さん

 

次に、80歳を過ぎてから五行歌を始められた

飯島治雄さんをご紹介します。

 

飯島さんは、2013年に89歳で亡くなられており、

生前も直接お目にかかったことはありません。

 

2016年ごろ、はじめて五行歌集『背中押さないでよ』を読み、

雷に打たれたように感動しました。

 

背中押さないでよ―飯島治雄五行歌集

背中押さないでよ―飯島治雄五行歌集

 

 

ご自分の「老い」や「死」と正面から向き合い続け、

それを飾らない平易な言葉で表現されています。

歌集全体から実直で控え目なお人柄が伝わり、

読んでいて何度も泣きそうになったくらいです。

 

ご存命の間に、一度でいいからお目にかかりたかったです。

もっと早く五行歌を始めていれば・・・と、

そう思わずにはいられないです。

 

ありがとうございましたと

普段着の

言葉で

逝ける人に

なりたい

 

飯島治雄

『背中押さないでよ』より

 

 

水源 純さん

 

続いては、私が定期的に参加しているAQ五行歌会

いつもお世話になっている水源 純さんをご紹介します。

 

ご本人曰く、自称「五行歌沼のヌシ」。

どことなく透明感のようなものを感じさせる、

やわらかで、しなやかな文体に惹かれます。

個人的な想いを「みんなのうた」へと昇華させることができる

稀有な感性の持ち主だと思います。

 

大きな駅の

灯りも消えて

眠らぬ街へ

君と

夜を壊しにゆく

 

水源 純

『ほんとう』より

 

水源 純さんは今まで、

『この鳩尾へ』『ほんとう』『しかくいボール』と

3冊の五行歌集を上梓されています。

それぞれ特徴が違うので、読み比べてみるのもオススメです。

 

 

この鳩尾へ

この鳩尾へ

 

 

 

ほんとう

ほんとう

 

 

 

しかくいボール: 子どものことばは道しるべ

しかくいボール: 子どものことばは道しるべ

 

 

 

水源カエデさん

 

最後に、水源 純さんのご子息で、

まだ10代である水源カエデさんをご紹介します。

 

水源カエデさんのお母様が純さん、

純さんのお母様も五行歌人、そのお父様も五行歌を書いていたそうですから、

カエデさんは五行歌サラブレッドと言ってもいいでしょう。

 

カエデさんは、一昨年に初の五行歌集である『一ヶ月反抗期』を上梓されました。

 

一ヶ月反抗期: 14歳の五行歌集 (そらまめ文庫)

一ヶ月反抗期: 14歳の五行歌集 (そらまめ文庫)

 

 

この歌集は、私にとっても大きな刺激になりました。

当時まだ14歳の少年がこれだけ良い歌集が作れるということに

素直に感動しました。カエデさんは6歳のころから、純さんによる

聞き書き」で五行歌を作ってきたので、キャリアとしては

私よりはるかに先輩ということになります。

 

『一ヶ月反抗期』には子供らしい無邪気な歌から、

思春期の葛藤を感じさせる歌、大人をドキッとさせる歌まで、

幅広い作品が収められています。

幼少期の歌から思春期の歌まで、一貫しているのは、

作為や衒いが無いということ。

自分の気持ちに対して正直で、表現に嘘が無いゆえに、

際どいことが書かれた歌でも、不思議な清々しさを感じてしまいます。

 

人はおはようから

はじまって

おやすみで

終わる

これを死ぬまでずっと

 

水源カエデ

『一ヶ月反抗期』より

 

間違いなく、五行歌の未来を担う存在の一人だと思いますし、

彼がこれからどんな歌を書いてゆくのかが、楽しみでしょうがないです。

 

以上、5名のうたびとをご紹介させていただきました。

他にもご紹介したいうたびとはいっぱいいますので、

また続編を書くと思います。