ひげっちが好むものごと。

詩歌とボドゲを中心に書きたいことを書きます。

【告知】歌集『宇宙人観察日記』オンライン鑑賞会を開催します【参加者募集!】

 どうも、ひげっちです。

 

 2月21日(日)に、山崎 光氏第一歌集『宇宙人観察日記』のオンライン鑑賞会を開催します!

 

 

五行歌集 宇宙人観察日記 (そらまめ文庫)

五行歌集 宇宙人観察日記 (そらまめ文庫)

  • 作者:山崎 光
  • 発売日: 2020/12/09
  • メディア: 新書
 

 

 

 昨年12月に刊行された山崎 光さんの歌集がとても良かったので、この歌集について語り合う場が欲しいと思い、企画させていただきます。本来は顔と顔を合わせての催しにしたいところですが、ご時世柄、Zoomを用いたオンラインでの開催とさせていただきます。

 

 当日はゲストとして山崎 光さん本人にもご参加いただきます。多くの方にご参加いただければ幸いです。

 

参加要件

  • 歌集『宇宙人観察日記』をお手元にお持ちの方。
  • 開催時間にビデオ会議ソフト・Zoom(ズーム)をインストールしたPC・タブレットスマホ等を利用できる環境にある方。

※Zoomについて
https://zoom.us/jp-jp/meetings.html
※Zoomは参加者の皆さんに自分の顔が見えるビデオ通話と、音声のみの通話が選べます。どちらを選ぶかは任意とします。
※参加者の皆さんへは当日10分前くらいにミーティングに接続するためのリンクを、メールにてお送りさせていただきます。

 

開催要項

日時:2021年2月21日(日)14時〜17時(予定)
準備:開催時間になりましたら、Zoomに接続してお待ちください。
参加費:無料
定員:10名(先着)
申込み方法:メール(hidgepaso0713@gmail.com) まで、参加希望の旨と、

①Zoomの表示名(ふりがな)
②歌集『宇宙人観察日記』に収録されている五行歌のうち、お好きな3首をお選びいただき、各作品の収録ページと1行目の文

を記載して、2月19日(金)までにご連絡ください。

お送りいただいた作品は、プリントにまとめて、前日中にメールにてお送り致します。また、当日Zoomの共有機能を通じて、参加者の皆さんとプリントを共有し、お歌の感想を言い合いたいと思います。

 

以上、よろしくお願いいたします!

ROTH BART BARONについて

どうも、ひげっちです。

 

今日は、最近ドはまりしているアーティストである、ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)について紹介したいと思います。

 

www.rothbartbaron.com

 

ホームページによると、ROTH BART BARON(以下、RBB)は

  • 2008年に結成された日本のインディーフォークバンド
  • 海外レコーディングを積極的に行っている
  • 日本のみならず世界各国でライブ活動も行ってきた

という、インディーながらワールドワイドに活躍しているバンドであることがわかります。

 

まずは、私が今のところRBBで一番好きな最新作『極彩色の祝祭』から、「極彩|IGL(S)」という曲を昨年末に行われたライブバージョンでご覧ください。

 


極彩|IGL(S) - ROTH BART BARON live at Persimmon Hall 2020.12.27

 

 RBBは本当に多彩な魅力があるバンドだと思いますが、その一つは印象的で美しいメロディーでしょう。ヴォーカルと作詞作曲を担当する三船雅也さんは、耳馴染みが良いのに何度も聴きたくなるような、不思議な力を持ったメロディーを作る方だと思います。

 

 また、高音域を多用する三船さんの中性的な声と歌唱も魅力です。さらに、バンドマンと言うより、「音楽家」と呼ぶのが相応しいような、三船さんの佇まいも華があってカッコいいなあ、と憧れます。

 

 そして、歌詞、これがまた良い。三船さんはかなり色々な音楽を聴いてきている、音楽IQの高い方とお見受けしていて、そういった方はとかく難解な詞を書いたり、英語詞にしたりしがちだと思うのですが、三船さんは違います。シンプルな誰にでも解る言葉を使い、ストレートなメッセージを伝える曲が多いです。

 

 前述の「極彩|IGL(S)」という曲の歌詞はこんな感じです。

 

君の物語を 絶やすな 絶やすな
君の物語を 絶やすな 絶やすな

 

誰かが作った幸せに 逃げるな 逃げるな
これから目にすることを 恐れるな 恐れるな

 

祝祭が見たいんだ 極彩色の心で

 

極彩|IGL(S)/ROTH BART BARON

 

 この曲を初めて聴いたのは去年の秋のことだと記憶していますが、コロナ自粛疲れでカッサカサだった心にこの歌詞はめちゃくちゃ沁みました。この時代に、聴き手に「君の物語を絶やすな」と歌う三船さんはとても熱い心を持つと同時に、とても誠実な方だと思います。自分のしたいこと、やるべきこと、そしてあるいは命そのものが危機にあると言ってもいい昨今、このメッセージはより多くの人に聴かれるべきだと感じました。

 

 RBBは、とても意欲的にSNSYouTubeクラウドファンディングなどを活用しており、公式チャンネルでYouTubeにライブ丸々一本の動画が上がっていたりします。ドはまりしている私でもさすがに全部は見られていない分量です。

 


ROTH BART BARON "HEX" TOUR | FULL SET | Dec 9th 2018 (Japan)

 

 

 サブスクのおかげで、旧譜も聴くことが出来ていますが、前作『けものたちの名前』も相当の名盤でした。リード曲の「けもののなまえ」もゲストヴォーカルのHANAさんと三船さんの掛け合いが光る名曲なので、ぜひご一聴を。

 


けもののなまえ feat. HANA|ROTH BART BARON - studio session -

 

 ここまでライブ映像をご覧になった方には分かると思いますが、RBBはかなりの大所帯バンドです。ただ、大半はサポートメンバーであり、結成時からのメンバーは三船さんとドラムの中原鉄也さんの2名だけです。しかも、この前作『けものたちの名前』を最後に、中原さんもバンドを脱退されています。実質、現在のRBBは三船さんのソロプロジェクトの色合いが強いものとなっていますが、それでも数多くのライブやレコーティングを通して、サポートメンバーと三船さんとの繋がりは強固になってきていると感じます。そんなバンドの調子の良さが伝わる動画を最後に貼っておきます。

 


Innocence at 新代田 FEVER | 2020.7.11 by ABANK

 

 新しい時代の音を鳴らす野心と意欲を持ったバンド、ROTH BART BARONをこれからも応援してゆきたいです!

 

 

(了)

新年のご挨拶(2021年)

あけましておめでとうございます。

ひげっちです。

 

旧年中はブログをご覧いただきありがとうございました。

2021年は去年よりもう少し更新頻度を上げていきたいです。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

TwitterFacebookに投稿した、去年の自選5首をアップしておきます。

五行歌と短歌でそれぞれA面とB面の10首ずつあります)

 

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2020年自選5首(五行歌

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2020年自選5首B面(五行歌

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2020年自選5首(短歌)

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2020年自選5首B面(短歌)

 

2020年自分的ベストコンテンツ

どうも、ひげっちです。

 

2020年もあとちょっとなので、

毎年恒例の自分的ベストコンテンツを書き記しておきます。

 

音楽・曲

トーチ/折坂悠太


折坂悠太 - トーチ (Official Music Video) / Yuta Orisaka - Torch

 新型コロナウイルス禍とは切っては切れない一年となった2020年のムードにどんぴしゃだった一曲。この曲はbutajiさんというシンガーソングライターとの共作であり、歌詞は2019年秋の台風19号被害から着想を得て書かれたものであるという。決して落ち込んだ気分を明るく元気づけてくれるような単純な歌ではないが、butajiさん独特の中毒性のあるメロディーラインと、折坂さんの書く温かみのある歌詞が相まって、とにかくこの曲に惚れ込んでしまい、一年を通して何度もリピートして聴いていた。カラオケでもよく歌った。

 

音楽・アルバム

極彩色の祝祭/ROTH BART BARON

極彩色の祝祭

極彩色の祝祭

  • アーティスト:ROTH BART BARON
  • 発売日: 2020/10/28
  • メディア: CD
 

  今年発見したアーティストで一番ハマったROTH BART BARON(ロットバルトバロン)の最新作。バンド名は知っている、くらいのスタンスでいたバンドだが、音楽評論家の柴 那典さんのツイートでこのアルバムのことを知り、聴いてみたのがきっかけでいっぺんに好きになってしまった。

 サブスクのおかげで旧譜もすべて聴くことができたが、2019年発表の前作『けものたちの名前』で、「もしもここを生き残れたら/僕の本当の名前をあげよう」(けもののなまえ)や「さよならまたいつか/会えるその時まで/いくつもドアをあけて/僕らまた出会おう」(春の嵐)といった、すでにコロナ禍を予言しているような歌詞があるのも興味深い。

 コロナ禍のもとで制作された本作は、明確にアフターコロナの時代に聴かれることを意識して作られている。「破壊された日常の向こう側」の道標となるような力強い作品だ。メロディーの美しさも特筆すべきだと思うが、詩歌を嗜んでいる身としては、やはり歌詞が気になった。三船雅也さんの書く歌詞は、何というか、嫉妬と羨望を禁じ得ない。「もし自分がロックバンドを組んでいたら、こういう歌詞を書きたいな」と思わされるような歌詞を実際に書いてらっしゃるからだ。ストレートなメッセージが響く歌もあれば、寓話的で空想を掻き立てる歌もある。そのどちらも、誠に勝手ながら、実に「波長が合う」感じがする。こういうバンドと同じ時代に生きることができて幸せだと思う。

 リリース直後から何度も聴き直しているが、聴く度に新しい発見があり、飽きない。ものすごく細部までこだわって作られているのが伝わってくるし、アルバム全体を通した一つの作品としてのまとまりが良い。アルバムを作るのに必要だったであろう、緻密な計算と、膨大なエネルギーと、表現者としての執念の凄まじさみたいなものも感じられ、軽く畏怖の念を覚えるほどだ。ぜひ未聴の方は体験して欲しい。

 

映画

パラサイト 半地下の家族/ポン・ジュノ監督

www.parasite-mv.jp

 コロナ禍のせいで映画館へ行く回数も減ってしまったので、今年は母数となる映画鑑賞作品の数が少ないが、その中で一本を選ぶとしたら、アカデミー賞作品賞にも輝いた本作だろう。元々、ポン・ジュノ監督は『殺人の追憶』ですごい!と思っていたが、本作はそれの数倍のインパクトがあった。

 現代社会への風刺を盛り込みつつ、先の読めないストーリー展開で、ジェットコースターに乗っているかのような視聴体験ができる。ある意味インド映画的な盛りだくさんな要素もあるが、物語の質感はやはり東アジア特有の湿っぽさがある。視聴者が何かを感じるまで、とにかくやれることを全部やったかのような脚本は、称賛に値すると思う。

 

来年もたくさんの大好きなものと出会えますように!

 

(了)

雑誌『五行歌』2020年3月号 お気に入り五行歌

どうも、ひげっちです。

 

すっかりどころじゃなく、前回のお気に入り更新から4ヶ月も間が空いてしまいました。忙しかったり、精神状態が不安定だったりで、なかなか本誌と向き合う時間が取れなかったです。

 

3月号のお気に入り五行歌を紹介させていただきます。

 

 
捌いた
男を
器に並べて
骨抜き加減をみる
小骨さえも許さない女
 
かおる
10p.
 どこまでも格好良い。ご自身の「男を料理する腕前」に自信が無いと、なかなかこうは書けない。気っぷの良さそうな捌きっぷりをぜひ一度拝見させていただきたいものだ。自分が捌かれてしまう怖れがあるのはちょっと怖いが、どうせ骨抜きにされるなら作者のような女性に…と思わされてしまう力のあるお歌だと思う。感服。
 
 
外国なら
土足で家に上がるけど
日本でされたら
脅威に思えませんか
ハラスメントって そんな感じっす
 
稲田準子
30p.
 被害者側と加害者側で、文化や常識が異なるが故のすれ違い。どちらにも悪気がなくても、悲劇が起こりうる。ハラスメントの特徴を上手く言い当てていると思う。イメージしやすい具体例を挙げて喩えているところが良い。自分の考え方を絶対と思わないこと、異なる文化や常識について想像力を働かせること、が大切なのだと思う。
 
 
正直者が
天国へ
行けるなら
そこには犯罪者が
一杯いるだろう
 
庄田雄二
36p.
 皮肉の効いたお歌。自分の欲求や願望に正直な者が必ずしも善人とは限らない、ということだろう。欲求や願望を叶えることは、時として誰かを傷付けたり、法を犯したりすることもある。結局、「自分に正直なことが大切」とか言いつつ、人間が社会的な動物である以上、近江商人の経営理念ではないが、「自分よし」「相手よし」「世間よし」の「三方よし」に則って、自分の欲求や願望を、なるべく人を傷付けない、世間的にも見栄えがするものに調整する必要がある。人間とはつくづくメンドクサイ生き物だなあ、と感じる。
 
 
明日から何か
変わるわけでもなく
閉店まで
パチンコを打つ
 
よしだ野々
39p.
 男の無頼な感覚を上手く表現されていて、惹かれた。家で待つ人も無く、もしかしたら身近に新年の挨拶をする相手もいないのかもしれない。新年の訪れを素直に喜べない切なさとともに、どこか清々しさも感じさせるのがいい。
 
 
ビニール袋2つ
年賀状10枚
人、ひとりの命など
こんな物か
病院から帰って来た父
 
大森晶子
57p.
 遺品を通じて、人が亡くなるという現象を上手く表現されている。描写が具体的なところが読み手に「死」のあっけなさや喪失感をリアリティを持って伝えていると思う。遺品に年賀状があるというのものまた味わい深い。病室に居ながらでも、ご親戚やご友人との繋がりを大切にしていた方なのかと想像する。
 
 
脱ぎ散らかした
靴を揃える
誰かの手で
今日も
生かされている
 
金沢詩乃
88p.
 とても好きなお歌。大雑把な自分の生き方を、丁寧に整えてくれる人。そうした誰かの存在はとても大切だと思う。靴を脱ぎ散らかしたのが、自分のことを言われたようで、大いに刺さった。自分で自分の靴を揃えられる人間になりたいが、それでも誰かを頼らずには生きていけない人間なんだろうな、と最近は思う。
 
 
子が親を
選べるならば
どれほどの人が
親になれる
だろうか
 
島田正美
89p.
 これはもう、ひとつの真実を言い当ててしまっている。名歌だと思う。里親になるには審査が大変だという話を聞いたことがあるが、子にとって完璧な親などというものは、そもそもが幻想だと思った方がいい。もちろん、逆も又真なりで、親にとって完璧な子というものも存在しない。別々の人間である以上、親も子もお互いにとって不完全なのだ。しかし、親というのは子に対して大きな影響力を持つので、両者の関係は決して対等ではない。子を持たない筆者ではあるが、親であるという責任は重いものだろう。読んでいて身の引き締まるお歌だった。
 
 
生きるために
ICU
行くのだ
たとえ生還の保証が
無いとしても
 
ICU・・・集中治療室
 
植松美穂
116p.
 特集『病に克つ』より。白血病を患った作者の闘病の様子が生々しく描かれた特集であった。中でも胸を打たれたのがこの一首。病に打ち克とうと必死に自らを鼓舞する想いが伝わってくる。無為に毎日を過ごしていると忘れがちであるが、生きていること自体が幸運な奇跡のようなもの。そのことを忘れずにいたい。
 
 
これからは
楽しいことを
するのではない
することを
楽しむのだ
 
鮫島龍三郎
129p.
 この作者もかつて大病を患われた。この達観したような境地のお歌は闘病経験を経てのものか。人にはそれぞれ楽しいこととそうではないことがあると思うが、行為そのものを楽しむ境地になれたのなら、物の見方が変わってくるに違いない。煩悩と怠惰にまみれた筆者にはまだその境地に達することができないが、惹かれるお歌だった。
 
 
ソファに凭たれ
韓ドラ観終えて
旅立っていった叔母
美意識の塊りの様な
人でした
 
棚橋八重子
137p.
 人の最期を自分で選べるとしたら、かなり理想に近い最期だったと言えるのではないか。穏やかな環境で、大好きな韓国ドラマを観終えて旅立たれた叔母。姪である作者から見て、故人は美意識の高い人だったという。もしかしたら、そんな叔母との思い出は優しく温かいものばかりではなかったのかもしれないが、故人に対する尊敬心が伝わる良歌だと思う。
 
 
私の話はいいの
と笑顔で話を譲る
私は
あなたのはなしが
聴きたいです
 
中山まさこ
194p.
 自分のことを後回しにして、笑顔で話の聞き役に回ろうとする、慎み深い「あなた」の人柄が感じられる。作者は、そんな「あなた」の話を聴きたがっている。本当は「あなた」にも他人に聴いてもらいたい話があることを、作者は勘付いているのではないか。きっと作者も大変な時を「あなた」に話を聴いてもらって乗り切った経験があるのかもしれない。お二人の素敵な関係性が伝わってくる。
 
 
できるものなら代わってやりたい
などと
出来ないことを
前提に
言う
 
眞 デレラ
206p.
 一行目のような台詞を筆者も言ったことがある気がして、ドキッとした。苦難の最中などにある人に対して向けた台詞であろうが、そこには後半三行のようなズルさが隠れている。言うなれば、安全圏から投げかけるだけの、みせかけの同情だ。それは同情する側が痛みを伴う自己犠牲ではなく、自分の罪悪感を減らすための自己満足の精神に他ならない。良い戒めをいただいたお歌。
 
 
俺を
馬鹿にした人が
家に来て感謝とか言う
ああ弱ってきた
徴だ
 
中野忠彦
241p.
 自分のことを馬鹿にした人が、態度を軟化させて感謝を述べている。その状態を受けての四、五行目が秀逸。そのことを喜ぶのではなく、その人が「弱ってきた徴だ」と受け取っている。弱ってきた原因が老いなのか病いなのかは明らかにされていないが、とにかくその人が自分に感謝を述べていることを、生物として弱ってきたからこその現象と捉えていることがシビアで良いと思った。それは、その人のこれまでの行いを作者が許していないことの証左かもしれないし、もしかしたら、作者自身にもその人と同じような、自分が弱ったが故に人に優しくしてしまうような経験があったのかもしれない。味わい深いお歌。
 
 
従順さではない
素直さが
大切なんだよ
自分の思いに
素直であること
 
今井幸男
242p.
 額に入れて飾っておきたいレベルで大好きなお歌である。従順さと素直さをはき違えている人は、きっと多いに違いない。それは子どもだけでなく、大人にも当てはまると思う。誰かの言うことに何も考えずにそのまま従うことは、従順であり、素直とは違う。それは、「相手の側から見た素直」であるかもしれないが、「自分の側の素直」ではないのだ。それでは、素直さとは一体何だろう?考えるとキリが無いが、強引に定義するなら「自分の思いを周囲との折り合いがつく範囲で主張できること」といった感じだろうか。「周囲との~」の部分が抜け落ちると、「我が儘」になってしまう。何事も鵜呑みにするのではなく、それをきちんと自分の思いと照らし合わせる癖を付けたい。
 
 
銀河系の大きさ
ミジンコの大きさ
脾臓の大きさ
いまのところぼくは
かなり小さい
 
山川 進
242p.
 「銀河系」「ミジンコ」「脾臓」という、大きさもジャンルもバラバラなもののチョイスがまず良い。それらが羅列された後のまとめ方も好み。四行目、「いまのところ」という表現が特に好きだ。矮小な自分を認めつつも可能性はまだ残されているという、押し付けがましくない希望を感じるところが良い。
 
 
デニムを
少しだけ
落としてはく
君の
若すぎない若さ
 
井村江里
281p.
 作者の「君」に対する温かみと冷ややかさが良い具合に混ざり合ったまなざしを感じるお歌。五行目の「若すぎない若さ」が実に巧み。目に余るほどの若作りではないものの、ひとこと物申したくなる(こうして歌にされている)程度には気にしている作者の視点が良い。言うなれば、生暖かく「君」を見守っているような、絶妙なバランス感覚が感じられるお歌だと思う。
 
 
(了)

【告知】全国文書大会についておしゃべりしよう!「第30回五行歌全国文書大会についてZoomで語り合う会」を開催します【参加者募集!】

 どうも、ひげっちです。

 

 12月5日(土)に「第30回五行歌全国文書大会についてZoomで語り合う会」を開催します!!

 

 第30回五行歌全国文書大会に参加された皆さま、そろそろお手元に「大会誌」が届いたころかと思います。

 

 参加者全員分のお歌と作者コメントが掲載されているのはもちろん、草壁先生の秀作コメントや各参加者の個人賞一覧なども収録されており、読みどころ満載の内容となっております。

 

 この大会誌を読んで感じたことや好きだったお歌について語り合える場が欲しいと思ったので、Zoomを用いてオンラインでやってみようという試みです。

 

 なお、五行歌の会事務局と直接は関係のない、非公式な会であることを
ご承知おきください。

 

 あまり肩肘張らず、楽しくおしゃべりできる会にしたいと思っています。
どうぞ気楽にご参加頂ければ幸いです。

 

  • 参加要件
  1. 第30回五行歌文書大会に参加された方、もしくは大会誌をお持ちの方。
  2. 開催時間にビデオ会議ソフト・Zoom(ズーム)をインストールしたPC・タブレットスマホ等を利用できる環境にある方。
    ※Zoomについて
    https://zoom.us/jp-jp/meetings.html
    ※Zoomは参加者の皆さんに自分の顔が見えるビデオ通話と、音声のみの通話が選べます。どちらを選ぶかは任意とします。
    ※参加者の皆さんへは当日10分前くらいにミーティングに接続するためのリンクを、TwitterのDMかメールにてお送りさせていただきます。

  • 開催要項
    日時:2020年12月5日(土)21時〜23時(予定)
    準備:開催時間になりましたら、Zoomに接続してお待ちください。アルコールを摂取したい方はご自由に。
    参加費:無料
    定員:10名(先着)
    申込み方法:Twitterアカウント(@hidgepaso)もしくはhidgepaso0713@gmail.com まで、参加希望の旨と、
    ①Zoomの表示名(ふりがな)
    を記載してご連絡ください。

    定員が埋まった場合募集を締め切りますが、先着10名以内であれば、当日1時間前くらいまで申し込みを受け付けます。

以上、よろしくお願いいたします!

雑誌『五行歌』2020年2月号 お気に入り五行歌

 どうも、ひげっちです。

 

 すっかり間が空いてしまいました。時間はあったはずなんですが、オンラインでごいたしたり、アニメ見たり、だらだらYouTube見たりするのに忙しく、ついつい本誌の読みを後回しにしてしまいました。

 

 2月号のお気に入り五行歌を紹介いたします。

 

 

こころ
と呟くと
心のこえに
耳は
傾く

 

水源 純
9p.

 「Hey, Siri」や「OK, Google」といった音声で起動するスマートスピーカーを連想した。作者は「こころ」と呟くことにより、自分の心のこえに耳を傾けることができるのだという。これは一種のおまじないのようなものだろうか。本当にこんな能力があるのなら、とても便利だと思う。判断に迷ったとき、悩んでいるときに、もう1人の自分の声を聴くことができる。そうした声を必要とする場面は案外たくさんあるのではないか。そんなことを感じさせてくれたお歌だった。

 

 

暮れの
大掃除のように
十二月に
俺を捨てる

 

よしだ野々
10p.

 恋人との別離はただでさえ辛いものだが、よりによって十二月というのはクリスマスや年末など「誰かと集まって楽しく過ごす」予定が多い時期なだけに、余計に辛い。「大掃除のように」という比喩がまた効果的だ。捨てられた男の悲哀がよく伝わるが、どこか転んでもただで起きないような、力強さ・たくましさのようなものも感じられ、そこがすごく好みだった。

 

 

孤独の表面が
曇ってきたので
夜更け
静かな色の布で
磨いています

 

南野薔子
13p.

 これは傑作だと思う。使われている言葉がどれも的確で効果的。作者にとっての「孤独」は、「透き通っているもの」であり、同時に「大事なもの」であるのだろう。自分の孤独としっかり向き合い、またそれを慈しんでいる人にしか、こういう歌は書けないのではないか。「静かな色の布」という表現がものすごく好き。

 

 

なんか
いいなあー
君がそこにいるだけで
なんか
いい

 

野村久子
50p.

 言われてみたい台詞である。美辞麗句を並べ立てた褒め言葉より、「なんかいい」という言葉が何より嬉しい場合もある。しかも何かをしたり、言ったりといった「行動」を褒めているのではなく、「そこにいるだけ」という「存在」そのものの肯定である。ある意味、究極の褒め言葉ではないだろうか。もちろん言ってくれた方との関係性にもよるだろうけど。

 

自分が
気持ちいいときは
たいてい
失敗している
と思っていい

 

神島宏子
80p.

 わかる、わかる、と大げさに頷いてしまう。自分が気持ちよく喋ったりしているときは、相手は意外と飽き飽きしてそれを聞いていたりして、基本的に出し手と受け手の「気持ちよさ」が合致することはあまりないと思っている。自分が「たまに」楽しいのは健康的だが、自分ばっかりが楽しいのはどこかバランスを欠いていると思った方が良い。大事な戒めを教えてくれるお歌だ。

 

 

横たわる
小さくなった
躰の脇で
ウタをメモする
ショーマストゴーオン

 

西條詩珠
113p.

 特集「おっちゃん」より。亡くなられた泊舟さんのことを詠ったお歌であろう。なきがらの横で、五行歌づくりをしているという、何とも生々しい迫力のあるお歌。「ショーマストゴーオン」という言い回しが好きだ。何が何でも、どんなことでも、歌を書き続けてやろうという、作者の執念のような気魄が伝わる。

 

 

芯からわたしに
足りぬものは
金でしか
買えない
自由なのだ

 

金沢詩乃
211p.

 金でしか買えない自由とは何だろう、と考えさせられた。自由とは束縛されていない状態のことであろうから、金のために束縛されているとすれば、一番に思いつくのは労働だろうか。作者は仕事に忙殺されており、自分のために使う時間が足りないのだと推察した。「金でも買えない自由」であれば、少々陳腐であるが、「金でしか買えない自由」というのが新鮮。不思議な説得力がある。

 

 

えらい
えらい
仕事をする
姿を見ると
みんなえらい

 

中野忠彦
222p.

 ほんとうにそう思います。働くのは大変。みんなお疲れ様です、という気分になる。作者はもしかしたら、もう仕事をリタイアされているのかもしれないと思ったりもしたが、仕事をしている方への敬意を忘れない姿勢に好感を持った。みんな色々なものと折り合いを付けて、働いている。この歌のような気持ちを忘れずにいたい。

 

 

支えた夫が転(こ)くれば
私も転くる
手を引き上げれど
共に又転くる
かじかむ夜ふけ

 

矢野キヨ子
250p.

 ご夫婦の姿を想像して温かい気持ちになった。歩くときも転ぶときも一蓮托生。綺麗事だけではないお二人の絆を感じた。ハートウォーミングなお歌のようにも読めるが、五行目の「かじかむ夜ふけ」から、どこか心許なさや不安感も想起させる。味わい深いお歌だと思う。

 

 

しょうがの漬物が
美味であった
茶にあうだろうと
思う私
十七才

 

長谷紗弥香
259p.

 若い作者と、しょうがの漬物との取り合わせが面白い。渋好みの自分を自分で面白がっているかのようで、そこが逆に若さを引き立てていて、読後感がさわやかだ。「美味であった」という言い方や「お茶」ではなく「茶」と言うところも仰々しさが感じられてよい。

 

 

昔読んだ本に
意味不明の
アンダーライン
当時の自分が
理解できない

 

としお
261p.

 あるある!と共感してしまった。受験勉強で読んだ本など、今見ると全然重要じゃない箇所に蛍光ペンでマークしてあったりする。たいていそういう本は当時の自分にはちょっと難しめな本であったりして、カタチだけでも理解した気になりたかったのか、一生懸命さが空回りしていたのか、どことなく微笑ましい気分にさせてくれるお歌だった。

 

 

お笑い番組
くだらないね」
と言いながら
二人で笑ってしまう
たいせつな時間

 

黒乃響子
308p.

 なぜ「くだらない」と批判を受けつつも、お笑い番組がこの世からなくならないのか、その理由がわかるようなお歌。ドキュメンタリーやニュース番組ではなし得ない、「たいせつな時間」をつくる力がお笑い番組には確かにあるのだと思う。良いお笑い番組を見ると、ふっと肩の力が抜けて、悩んでいることが馬鹿馬鹿しくなるような、前向きな気持ちになれる。それは現実から目を逸らす、気休めやガス抜きのようなものかもしれないが、心を整えるという点においては、他の難しい番組よりも、お笑い番組の方が原始的で強い力を持っているように思う。歌の中の「二人」というのがどのような関係かはわからないが、たいせつな人との時間のお供には、テレビからネットへと媒体は変わるのかもしれないが、お笑い的な要素のある番組があり続けるのではないか。

 

 


(了)